PIAZZA LIFEについて
  • ホーム
  • 働く
  • 三井不動産が取り組んだ、みんなの思いをつなぐ「日本橋・お弁当プロジェクト」とは
2021.01.14

三井不動産が取り組んだ、みんなの思いをつなぐ「日本橋・お弁当プロジェクト」とは

新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた日本橋の飲食店。そんな日本橋の街で、「何か街を元気にする施策が打ち出せないか?」と立ち上がったのが、日本橋を本拠地とする三井不動産の坂本 彩さん。一般社団法人日本橋室町エリアマネジメントの事務局として「飲食店と福祉現場をつなぐ|日本橋 お弁当で応援プロジェクト」の立ち上げに携わった坂本さんに、PIAZZA代表の矢野 晃平がお話を伺いました。

※新型コロナウイルスの感染拡大リスクに十分配慮のうえ取材を行いました。

三井不動産株式会社

日本を代表する総合デベロッパー。「ららぽーと」や「東京ミッドタウン」、「日本橋再生計画」、「柏の葉スマートシティプロジェクト」など、幅広い領域において街づくりを手掛ける。

応援の気持ちを表現できる「器」をつくる

  • 矢野

    坂本さん、本日はお時間をいただきありがとうございます。それでは、簡単に自己紹介からお願いできますでしょうか。
  • 坂本

    2010年に三井不動産に入社して、最初の3年間は商業施設「ららぽーと」の営業をしていました。そのあと2年間は三井不動産商業マネジメントというグループ会社に出向して、「ららぽーと」のより現場に近いところで、既存店さまとのさまざまな折衝や販促企画などを行っていました。2015年に日本橋街づくり推進部に異動となり、そこから日本橋に関わっています。
三井不動産 坂本さん(右)にお話を伺うPIAZZA代表の矢野(左)
三井不動産 坂本さん(右)にお話を伺うPIAZZA代表の矢野(左)
  • 矢野

    業務内容としては、どのようなことをされているのですか。
  • 坂本

    言葉の定義が緩いのであまり使わないようにしているのですが――いわゆる「エリアマネジメント」領域のことに携わっています。軸は大きく2つあって、ひとつはエリアのプロモーションや情報発信、街の中のコミュニケーションの業務。もうひとつは狭義の「エリアマネジメント」―公共空間を活用した街づくりの仕組みを作るような業務に携わっています。
  • 矢野

    昨今のコロナウイルスの影響もあって、坂本さんは日本橋でさまざまな活動をされたと伺っています。そのなかのひとつに「日本橋 お弁当で応援プロジェクト」というものがあったと聞いているのですが、これはどういった取り組みだったのですか?
  • 坂本

    クラウドファンディングを使って一般の方や企業の皆さんからご支援をいただき、集まったお金を元手に日本橋の飲食店さんにお弁当を作っていただく。そのお弁当を24時間365日休みなく働いていらっしゃる福祉現場の方々に寄付させていただくというプロジェクトで、飲食店の皆さん・福祉現場の方々両方の応援につながるプロジェクトです。

    もともと飲食店の方々がコロナウイルスの影響を受けて大変だという話は伺っていたので、飲食店さんの応援につながることが何かできないだろうか……という目線でさまざまな企画を進めていたんです。ところが、実際にお店の方々とお話をすると、皆さん「困っている方を食の力で助けたい」という想いを持たれていたんですよね。自分たちだって決して楽な状況ではない中で……江戸っ子だなぁ、かっこいいプライドだなぁと感じましたね。

    なので、単に飲食店を支援するクラウドファンディングではなくて、店舗の売上にもなるけれど、それが誰かの応援にもつながるという、応援の輪が広がるようなプロジェクトにすることを強く意識しました。そうじゃないと店舗のみなさまを意思を尊重したことにもならないし、日本橋らしくないなと思っていました。福祉の現場、日本橋の飲食店、応援したいという想いをもった企業や個人……この三者をつなぐことで「三方良し」のような仕組みを目指したいと思い、このプロジェクトを立ち上げました。
  • 矢野

    地域のお金を集めて、地域の事業者さまがまた支援をつないでいくと。まさに、ローカルで支え合いが連鎖しているという感じですね。
  • 坂本

    そうですね――「支援」とか「助ける」という表現には少し上下のニュアンスが含まれているので違うかもしれませんけど、「応援し合う」というような考え方がピッタリかなと思っています。今回のプロジェクトで言うと、「応援したい」と思ってくださっている方々がいたというのも大きいなぁと思っています。

    今回クラウドファンディングに参加される方って、皆さんコロナウイルスの影響で自粛せざるを得なくなって、在宅勤務しなければならなくなっていたんですよね。うち(三井不動産)の社員もそうだったんですが「日本橋の飲食店は大丈夫かしら」と心配ではあるものの、食べには行けない……。何かしたいけど、どうやったら応援できるんだろうという声はたくさんあったんです。

    それで、そういう応援の気持ちを表現できる、応援の気持ちを受け入れる器があることがこのタイミングでは価値があるのではないかって思ったんですよね。飲食店を応援したい人が応援できる「器」があって、それを通じて飲食店さんも誰かの応援ができてという、そういう連鎖が生まれていけば日本橋らしいプロジェクトになるんじゃないかと思ったんです。

「ワンチーム」で実現した、人々の思いをつなぐプロジェクト

  • 矢野

    このプロジェクトを計画されてからものすごいスピードで動かれたと聞いたのですが、どんなスケジュールで進んだのですか?
  • 坂本

    これ、ちょっとキッカケは面白くって。やっぱりwithコロナの状況になって社会がガラッと変わってしまいましたし、街の状況も一変してしまったんですね。これまでだったら街の中の課題を抽出して、それに対して「こうやるべきじゃないか」という仮説を自分なりにたてたうえで企画を考えていたんですが――もう正直、この春なんかは社会全体が一回リセットされてしまったような状態で、自分ひとりでは仮説のたてようもないなと思ったんですよ、お手上げだなーと。

    とにかくいろんな人からアイデアを聞いたり、ありとあらゆるリソースを集めて持ってこないと、いいものが出てこないなと。それで、部内SNSでメンバーに向けて「飲食店さんの応援につながる他エリアでの展開事例とか、新しいアイディアとか、思いついた人いませんか?」と問いかけてみたんですね。

    そうすると、肩書に関係なく上司も後輩も、みんながいろんなアイディアをくれて。そんな中に今回のプロジェクトにつながるアイディアがあったんです。それは私と一緒に動いている後輩の子が教えてくれたアメリカの事例だったんですけど、とあるお店が「病院に届けるためのお弁当を作るので、買ってくれる人はいませんか」と始めたプロジェクトだったんです。

    その子は千葉に住んでいるので当時日本橋にはなかなかこれなかったので、「この方法だったら私も、飲食店に行けなくても街の応援ができます!」みたいな感じで情報をくれたんですね。それで「これはいいね、『三方良し』だね」ということになって、そこからバーッと企画書を一気に書き上げました。

    まずは普段からご一緒させていただくことの多い日本橋の飲食店青年部の会長さんのところに、「これどうですか」と持って行きました。そこですぐに「いいね、是非やろう!」ってなりまして。そのあと社内の手続きがちょっと大変だったんですけど(笑)、関係各所の確認を一気に進めました。

    各所確認や手続きは大変ではあったんですが、こんな状況だからというのもあって、いろんな社員がとても前向きに力を貸してくれました。「街づくりをする三井不動産としてこういうプロジェクトをやるべきだよね」と応援のコメントをたくさんもらえたのもとても印象的でしたね。5月中には全ての確認を取り終えて、6月10日にはもうプロジェクトが立ち上がりました。ですからWebサイトの準備なんかも1ヶ月弱くらいですね。協力いただいたクリエイティブの会社さんには本当に頑張っていただいて。皆さんも「このプロジェクトはスピード感をもってやることに価値がある」と思ってくださっていたので、なんとか立ち上げにこぎ着けた感じですね。
  • 矢野

    いやぁ……それはすごい!(笑)

「コミュニティの価値」を可視化できた

  • 矢野

    今回すごいスピードで立ち上げられたこのプロジェクトですが、結果も大成功だったとお聞きしています。坂本さんとしてはその結果をどのように受け止めていますか?
クラウドファンディングは大成功を収めた
クラウドファンディングは大成功を収めた
  • 坂本

    今回の目標額は300万円に設定していました。タイミング的に夏に入る前には福祉現場の方にお弁当をお届けしたいという思いもあったので、通常のクラウドファンディングであれば1ヶ月半くらいかけて実施するところを、今回は3週間という短期間で実施しました。「300万円なんとか集めるぞ!」という感じでやったのですが、無事にクリアして約320万円が集まりました。このほかに企業さまからのご協賛も予想を上回る形で集まりまして……皆さんの「街を応援したい!」という気持ちがうまく可視化できたなと感じましたね。
  • 矢野

    おお、素晴らしい!(拍手)
  • 坂本

    一般の方からのクラウドファンディングと企業の方々からの協賛金で、目標は大きく上回ることができたと思います。集まった資金を元に合計約2千個のお弁当を福祉現場へ寄付させていただくと共に、クラウドファンディングのリターンとして、地域のお食事券を発行させていただきました。福祉現場の応援と地域への経済還元ということで、一定の価値を発揮できたと思っています。けど、それとは別に、今回のプロジェクトで「新しい人のつながり」が生まれたことも、裏にあるもうひとつの成功なんじゃないかなと思っています。

    実はこのプロジェクトの前にも、飲食店さんから病院にお弁当を寄付するというプロジェクトをお手伝いしていたことがあったんですが、そのときに寄付を受け取っていた病院関係者の方々が今度は応援する側に回って、クラウドファンディングに参加してくださったり。あるいは、今回お弁当を受け取った福祉現場の方が、そのあとでお礼にと、実際にお客さんとして飲食店に足を運んでくださったりしたんですね。これまでは日本橋の飲食店に来たことがなかった方々が、これをきっかけに来てくださって、そこでお金を支払ってくださる。そういう新しいつながりが生まれて、応援の輪が広がっていったことこそが、結構大きな価値だったかなと思っています。

    日本橋のコミュニティは強いとよく言われますし、私も実際そう思っているんですけれど、そのなかなか可視化しづらい「コミュニティの力」が今回の件でうまく可視化されたっていう部分も大きいと思っているんですね。今回のこのプロジェクトは、READYFORさんのクラウドファンディングの平均的な購入率(Webサイトを見た人のうち、購入に至った人の割合)よりもかなり高い購入率だったんです。つまり「これ、応援するぞ!」と決めてサイトを訪れている方が多いということで。サイトへの流入元を調べてみると、個人のメールですとかLINEですとか、個人発信の情報を受け取って、そこから入ってきた方が圧倒的に多かったんですね。それは、日本橋にもともとあった強い「つながり」が、今回の高い購入率につながっているんだということが明確に可視化されたと思っているんです。

    やっぱり「コミュニティの価値」って何?みたいなところって、わかる人にはわかるし、わからない人にはわからないものだと思うんですが、今回は「お金の集まり方」という形でひとつ可視化できたんじゃないかなと思います。それでそのプロジェクトの結果として、新しく人のつながりができたとか、お店を利用してくれる方が増えたとか、そういった一連の流れ自体が、これまでぼんやりしていた「コミュニティの価値」をちょっとでも可視化できたんじゃないかなと受け止めています。
  • 矢野

    いやあ、すごいですね。金額以上に「街のつながり」が可視化できたことに価値を見出していらっしゃるんですね。またこういったことを、今後もされていく予定なんですか?
  • 坂本

    そうですね、クラウドファンディングっていうのは手段のひとつだと思うので、その形にこだわることはないかなと思います。やっぱり人と人とのつながりの価値をどう可視化していくか、あるいはどうやってコミュニティの価値を数値として表していくのか。そういうところはぜひ取り組んでいきたいと思います。

(後編へ続く)

関連記事(全2回)

前編:三井不動産が取り組んだ、みんなの思いをつなぐ「日本橋・お弁当プロジェクト」とは
後編:三井不動産が考える、街づくりに大切なこと。それはみんなの気持ちに火を点けること

この記事をシェアする

sns share

く」のおすすめ記事

Work's category