麻布森元町会役員の日下部さん――コミュニティなんて熱い風呂と同じ、慣れてしまえばどうってことない
PIAZZA LIFEでは、地域SNS「ピアッザ」をご利用いただいているユーザーのインタビューをご紹介していきます。今回は「麻布・六本木エリア」で5年前からピアッザをご利用いただいている麻布森元町会役員の日下部 泰祐さんにお話を伺いました。
※新型コロナウイルスの感染拡大リスクに十分配慮のうえ取材を行いました。
日下部 泰祐(くさかべ たいすけ)さん
ピアッザ利用エリア:麻布・六本木エリア
東京タワーが日常に溶け込む東京都港区東麻布に生まれ育った、2人のお子さんを持つ40代のお父さん。麻布森元町会の役員として活躍されている。
ピアッザプロフィール
ご近所さんとお互いの役割を確認しあう。お祭りって町内の防災訓練みたいなもの
――麻布森元町会ではどのような活動をされているのですか
本来であれば6月の第1週に熊野神社のお祭りがありまして。大人はお神輿担いで、子どもにはお菓子を配って山車を回してっていうのを毎年やってたんですけれど。
そもそもお祭りって、町内の防災訓練みたいなもんだと思ってるんです。テント建てるよとか、焼きそば作るよとか……誰が材料を準備する? じゃあ俺が作るから、あんたみんなに配ってよ……って、まぁオペレーションとしては炊き出しと変わらないんですよね。
しゃちほこばって「さあ避難訓練をしましょう」って言ったって集まらないでしょ? だから、何かあったときの連携なんかをみんなで訓練するわけですよ、お祭りを通して。そういうやり取りがあると人の顔も覚えますしね。年に1回くらいはこういうのがあってもいいんじゃないかって思います。
あとはカレンダーに合わせたちょっとしたイベント――敬老の日に商品券を配ったり、こどもの日にお菓子を配ったり――とか、他には東京タワーの近くで花壇ボランティアもやってますね。
――コロナ禍で町会としての活動がしづらくなっているのでは?
そうですね、回覧板を回しているくらいで、町会としてのアクションは事実上停止してしまっています。役員会を開こうにも、残念ながら話し合うことがないんですよ。
会社勤めの皆さんは自宅で仕事をされることが多くなって、住んでいる街に居る時間が長くなりました。そういう意味では、コロナ禍だからこそ町会のような地域コミュニティにできることもあるんじゃないかとは思うんですが、なかなか難しいです。
――そういう人たちが今必要としている情報ってなんなんでしょう?
コロナで仕事がなくなっちゃった時に使える行政サービスってあるじゃないですか、例えば家賃補助とか。じゃあ、彼らが能動的に申請してそういったサービスを受けられるかっていうと、周りが助言やサポートをしてあげられるような何らかのつながりがないと厳しいと思うんですよね。
一方で、町会としても目に見えないところで誰かが倒れていてもわからないわけですよ。見えてさえいれば、「こういうのがあるよ、手伝おうか」なんていろいろお節介もできるんですが(笑)
ピアッザのようなツールを利用して町会から情報発信するにしても、やはりそこは公的なものを紹介するくらいに留まっちゃいますよね。本当に大切な話っていうのは、どうしてもリアルの関係性の軽重によって伝わる範囲が変わってきちゃう。デジタルツールは上手く使いこなせば便利なものだけど、最終的に大事になってくるのはやっぱりリアルなつながりなんですよね。
コミュニティなんて熱い風呂と同じ。慣れてしまえばどうってことないんだけど
――結局、そういった方々が地域コミュニティと交わることはないのでしょうか?
まぁ、難しいですよね。朝家を出て、夜戻ってきて、コンビニでご飯を買って家に帰る。そんな生活を繰り返してる人たちが地域のコミュニティにコミットするかっていうと、それはしないと思う。転職とか結婚とか、ライフステージが変わればいずれ引っ越しちゃうだろうし、そもそも住む場所を立地でしか選んでないですから。しょうがないとは思います。
でもね、一見パラレルで交わらないようにも思える両者だけど、ちょっとした交わりがひとつできると、そこにコミュニティは自然に生まれるんですよ。例えば――町会の役員っていうと重いし面倒くさいけど――ちょっとお祭り手伝ってよってお願いしたら結構よろこんでやってくれたりするんです。
いやぁすみませんギャラないんですけど、スタッフTシャツと缶ビール1本で勘弁してください――みたいな感じで射的を見ててもらったり、ゴミ箱を片付けてもらったり。最近増えましたよ、一人暮らしの男性とか。いいよいいよって引き受けてくれる。本当にありがたいですよね。
自分のスキルを誰かのために活かしたい、自分にできることは何かないかって探してる人は、実は結構たくさんいると思いますよ。
――いざ地域コミュニティに飛び込むとなると、そのハードルって結構高いように感じます
地域コミュニティってお年寄りも多いし「昔ながらのいろんな慣習がありそうだ」とか、若い人たちにしてみればかなり面倒くさいイメージがあるんでしょうね。
でもね、こういうのって熱いお風呂と一緒で――いっぺん飛び込んじゃえば、慣れてしまえば実はどうということはないんですよ。でも実際に入ってみないとそのことになかなか気づけないんですよね。
だから、まずはお試しで入ってみて、熱かったらすぐに出ちゃえばいいんです。それで入ってみて初めて気づくんですよ――熱いのにはわけがあるんだ――ってね(笑)
土地へのこだわりって、結局は人がキーになってることが多いのかも
――いわゆる「地縁」ってどういう意味を持つのでしょうか
地方から出てきて東京に集まった人たちからすると、そもそも都会に地縁を求めていないというか――どちらかというと利便性で住む場所を決めますから――地縁に関してはそんなに重要視してないですよね。
ところが最近はコロナの影響もあってか、いざというときのためにはやっぱり地縁を見直したほうがいいんじゃないかっていう流れが来ていたりするみたいなんです。だけどそれって触れ合いだとか優しさだとかを求めているわけではなくって、結局は自分の利益のためなんですよ。
でもそれでもいいと思うんです。少なくとも困った時に声を掛け合える、誰かが除け者になってしまわない程度の距離感ではつながっておくべきですよね。
本当は喧嘩してもすぐ仲直りするくらいの距離でうまく付き合えればいいんだろうけど……それはなかなか難しいでしょうね。
――土地に対する愛着とかこだわりって何がきっかけで生まれるのでしょう
例えば、最初は「お寺参りがしたいから」ってその街に行ってみることはあるかもしれないけれど、それだけでその後も通うかといえば違うと思うんですよね。
結局、そこになにか引っかかるお店があったり、気になる人がいたりするわけですよ――「おや、また来たのかい?」とか「いらっしゃい、ずいぶんごぶさたですね」みたいなやり取りがあって。だからそこに通うわけだし、人によっては「もう住んじゃおう」っていうこともあるかもしれない。
何が心に引っかかるかは人それぞれだと思うけれど、土地への愛着とかこだわりって、やっぱり「人」がキーになることが多いんじゃないですかね。
コロナ禍におけるリアルコミュニティの運営は困難を極めるところですが、リアルでできない部分をピアッザのようなデジタルツールでうまく補完できるといいなと感じました。
大変興味深い話をお聞かせいただきありがとうございました。